Project 2026

AI × 生物学:消化器系病原体に対するファージ工学

AI × 生物学:消化器系病原体に対するファージ工学

私たちは、胃の中のような低pH環境に耐性を持つバクテリオファージの開発に取り組んでいます。開発にあたっては、酸性耐性を検証するための独自のAIプラットフォームを使用しています。

細菌は私たちの身の周りに数多く存在し、その中の一部は深刻な健康被害を引き起こします。例えば、人間の胃の中に生息するピロリ菌は、胃潰瘍や胃がんの原因になるとされています。これまでそのような細菌の治療は、抗生物質の使用に頼っていました。しかし、近年細菌が抗生物質に対して耐性を獲得し始めており、薬の効きが悪くなってしまっています。また、抗生物質は投与した先に生息する色々な細菌の生存に影響を及ぼすため、人間にとって良い影響を及ぼす細菌も一緒に駆除してしまうことも、問題として挙げられています。そんな中で、私たちは「ファージ」と呼ばれる特定の細菌をターゲットとして駆除できるウイルスを用いた「ファージ療法」の開発を目指して研究に取り組んでいます。ファージはターゲットの細菌のみを殺傷するため、人体への悪影響が抗生物質に比べて少ないとされています。ファージ治療は、抗生物質に代わる細菌に対する新たな治療法として、注目を浴びています。 一方で、課題も残されています。基本的に、ファージは強酸性環境に耐性を持っていません。先ほど例に出したピロリ菌などは、強酸性環境である胃の中に生息するため、これまでのファージ療法では治療が困難です。このような制約を解消するため、私たちは強酸性耐性を持った「合成ファージ」の開発に着手しています。開発においては、独自のAIプラットフォームを構築し、合成ファージに必要な「遺伝子の変異」を効率的に見つける方法を模索しています。この合成ファージを開発する手法は、ピロリ菌に対するファージのみならず、様々な細菌に対する対応策として応用が可能です。特に、私たちは沖縄社会への貢献を目指し、アグー豚に被害をもたらす細菌(赤痢菌や大腸菌など)の駆除にも注目して、研究を進めています。また、私たちは構築したAIプラットフォームを、ファージの強酸性耐性を検証するためだけでなく、沖縄の酸性環境に関わる地域課題(赤土問題やサトウキビの分解など)にも応用し、沖縄社会の持続可能な発展に貢献することを目指しています。